RA(修了生)

永嶋 弘樹

主専攻
修士(工学)
修士(経済学)
副専攻
経済学研究科 修士(経済学)
研究テーマ

実世界ハプティクスに基づく人間支援のためのロボット制御

趣味
バスケットボール,クラシックギター,ジャグリング

5年間を振り返る

リーディングプログラム,それは修行の連続であり,人生の転機と言える存在であった。この5年間を振り返ると,プログラムに入った当初には想像し得なかったほどの多くの知識を得て,幅広い視野を持ち,数多くの仲間と出会い,確かな成長を実感することができた。プログラムでの活動を通じて向き合ってきた「超成熟社会発展のサイエンス」,ときにマクロなスケールで,ときにミクロなスケールで学生,特任教員,メンターの先生方と議論をしてきた。そして,プログラムの出口において纏め上げた政策提言,この活動がプログラム修了後の進路に直結することとなった。結果的には「プログラムを通じて後期博士課程での活動と社会人としての職務をシームレスにつなぐ」というプログラム開始当初の目的を体現することとなったが,果たして一体この展開を誰が予想できただろうか。
 この展開に最初のきっかけを与えてくれたのは,主専攻の理工学研究科にてご指導いただいている桂誠一郎准教授であった。「常に全力で」という熱い研究室運営のスローガンの下,ロボット制御を中心としてシステムデザイン工学が持つ俯瞰的な視座についてご指導いただけた。そして,桂先生には主専攻の研究のみならず,私という1人の人間に対して正面から向き合い,「常に全力で」受け止めてくれた。その感謝の気持ちは表現しきれない。
 上記の主専攻に加えて,副専攻での修士論文の執筆は本プログラムの大きな挑戦の一つであった。そして,その挑戦を寛容な心で支えてくれたのが経済学研究科の中妻輝雄教授である。ベイズ統計学に基づく日本の都道府県別景気指標の時空間推計を研究課題として掲げ,懇切丁寧にご指導いただけた。1年間という限られた期間の中において,国内外の学会において発表させていただくに至ったのは,何より中妻教授の支えがあってのことである。
主専攻及び副専攻の修士課程としての3年間を通じて学んだのは,電気工学・機械工学・制御工学といった工学領域における研究や方法論,そしてマクロ経済学・計量経済学・ベイズ統計学といった経済学領域における研究や方法論であるが,これは目に見える学びと言える。他方で,プログラムを通じてその両方を学んだことの価値は,直接的には目に見えない両研究領域の共通項となる「データと構造を見つめる視座」であったり,両学問領域の価値観や文化の違いを俯瞰し受け入れる「幅広い視野と寛容力」であったりだと言える。
副専攻での学びとは異なる形で広い視野を鍛えてくださったのは高橋・林アンドパートナーズ代表であり弁護士・弁理士の高橋雄一郎先生である。高橋先生には弁護士や弁理士,中小企業経営やベンチャー支援等幅広い現場経験に加えて,多彩な知識の引き出しや柔軟な発想力で以って,グループプロジェクト演習(GPE)で多くの指導をいただいた。振り返ると,高橋先生のご指導には,政策提言をまとめていく上で必要な,「将来を予見する大胆な発想力」とそれを「実現する緻密さ」の両方が盛り込まれていた。このように社会で様々な経験を積んだメンターの方々から毎週直接指導をいただける環境は大変有難く,通常の大学教育では学びえない知識,視点,発想力を得ることができたと言える。
主専攻,副専攻,GPEでの活動を通じては幅広い知識や視野,発想力や構想力が鍛えられたが,修士課程における海外インターンシップとしてのタイでの就業体験や博士課程における半年間の留学では短期間ながら濃密で充実した期間を過ごし,人として成長することができた。特に,留学でお世話になったカリフォルニア工科大学のJoel Burdick教授には,急な訪問研究にも関わらず,火星探査用球体型ロボットの軌道計画についてプロジェクトに参加させていただけたとともに,研究のご指導をいただけたことを感謝申し上げたい。
プログラムを通じた活動について,主専攻,副専攻,GPE,そして海外インターンシップや留学について振り返ってきたが,ここまでの内容はプログラムの仕組みとして目に見える形で組み込まれてきたものが中心となっている。しかし,直接的には目に見えないものを含めてプログラムの価値を何より高めたのは,本プログラムに所属する学生,教員,メンターが一同に会する場「水飲み場」があったことであろう。水飲み場においては,多様な人が集まっていることから,「研究の抽象化」・「プレゼンテーション能力」「寛容力」「適応力」「調整力」等様々な能力・スキルが鍛えられた。特筆すべきは上記の学びの機会は全て気付くところから学ぶところまで本人の裁量に任されている,まさに「独立自尊」である。
プログラム内で議論し高めあった仲間は数多くいるが,その中でもやはりプログラム開始当初から共に前線で歩んできたRA1期生にはお礼を述べたい。そもそも絶対数が少ない博士課程において,さらにこのようなプログラムへの参加ともなると苦労や体験,問題意識等の境遇が共有できる同志が身近にいることは有難いことのこの上ない。
この5年間を振り返って,各場面でお世話になった方への御礼を述べているが,もう間もなく原稿が埋まってしまう。しかし,それだけ多くの方々に支えられてきたということなのだろう。そして,これからも社会に出てから様々な場面で助けを受けることになるかもしれない。しかし,たとえ少しずつであっても成長を通じて得られたものをお世話になった方々,慶應義塾大学,そして日本へと還元していきたいと思っている。
難題が山積する日本,しかしその数だけ変化の可能性が秘められている。そしてその数だけ成長の可能性が秘められている。可能性を可能性に留めずに具現化させるのは自分自身の前向きな姿勢であることは,この5年間で経験的に学んできており血肉と化している。「常に全力で」挑戦を続け,成長し続けたい。

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