RA(修了生)

安藤 大佑

主専攻
修士(工学)
修士(商学)
博士(工学)
副専攻
商学研究科 修士(商学)
研究テーマ

大容量ファイル共有のための分散ストレージシステム
Content Espressoの設計と実装、コンテンツ配信システム

趣味
写真撮影、町歩き
特技
血液型を当てること、LANケーブルを作ること

5年間を振り返る

私がリーディング大学院プログラムを知ったのは修士1年になった年の4月初旬でした。当時の私は博士に進学するか、それとも修士で就職をするのか悩んでおりました。進路相談をするため、当時の指導教員である寺岡文男教授の居室へ伺った際に、このリーディング大学院オールラウンド型のチラシを寺岡教授から貰いました。これが私とリーディング大学院プログラムの出会いです。「次世代の博士」「グローバルリーダ」という聞こえの良い謳い文句が並んだそのチラシを胡散臭く感じるも無視できずにいた私は、たまたまその日やっていたガイダンスに出席してみることにしました。
ガイダンスではこれから日本が直面する問題、これからどういう人材が必要とされているかが山中直明教授によって熱く語られていました。私はその話に聞き入ってしまいました。「次世代の博士」、「グローバルリーダ」、それこそが私が目指す道なのではないかと考え始めました。結局、山中教授の口車に乗せられる形でリーディング大学院に応募し、そして参加することとなったのです。
それからほぼ毎週土曜日には日吉キャンパス西別館に集まり、英会話のレッスンやグループプロジェクト演習(GPE)、キャリアパス講演を始めとした様々なカリキュラムをこなしていきました。私自身、学部4年生時にアメリカで英語を利用した発表をした経験がありましたが、その時の発表と来たらヒドイもので、発表ではパワーポイントに書いたカンペを読むだけ、質疑応答では相手が何を言っているのか全く理解できないといったレベルでした。それがリーディングに入ってどうでしょう?たった1年間の英会話レッスンとプログレスミーティング(主専攻の研究内容を英語でプレゼンするカリキュラム)だけで、1ヶ月アメリカでインターンシップするレベルまで上達したではないですか!当然たったこれだけでビジネスに十分な英語力が付いたとは言えないでしょう。しかしながら、英語でコミュニケーションとれたことの楽しさが、英語を話すことの苦しさに勝るようになってきました。これはしめたものでした。それ以降、私は苦も無く英語を使えるようになりました。英語はこれからの人生で最も重要なコミュニケーションツールの一つとなるでしょうから、これからも磨いていきたいと感じています。
このリーディングを語る上で外せないのがやはりGPEでしょう。GPEでは産業界の、それも部長クラス以上の方々が休日である土曜日を潰してまで、大好きなゴルフができなくなってまで、我々のためにメンターとして時間を割いて指導して下さるのです。私の指導をして下さったメンターはソニー株式会社の上田理氏でした。上田氏はオープンソースコミュニティに対する知見が広く、特にLinuxコミュニティについて様々な経験を持っておいででした。GPEのメンターを誰にするのか、そしてそのメンターの元でどのようなテーマに取り組むのか、各学生が希望を出せることになっています。私は自身の主専攻がコンピュータサイエンスでしたので、Linuxに対する基礎的な知識はありました。ですから、安易にも私は上田氏をメンターとして選んだのです。そして、自身が研究しているインターネットと関わりがあるということで、「Web上のコミュニティ」にターゲットを絞った活性化の方法や要因分析をGPEの大きなテーマとして設定しました。これが大きな運命の分かれ道でした。その瞬間から、私と「コミュニティ」という言葉には5年にも及ぶ、切っても切れない関係ができてしまったのです。
GPEでWeb上のコミュニティ活性化手法を調査する傍ら、考えなくてはならないのは副専攻の進路です。本プログラムでは主専攻の他にもう一つ修士を取る必要があるのでやることは山積みです。丁度、GPEでやっているテーマを深掘りしていきたいと感じており、また、コミュニティの学術的な専門家がGPEのチームには居なかったことから、副専攻にてGPEで取り組んでいるコミュニティ研究を深掘りしようと考えました。決して、副専攻とGPEのテーマを同じにすれば、スケジュールが楽になるからなんて考えたりはしていません。副専攻を選ぶにあたって、まず研究科を決める必要があります。コミュニティ、特に、Web上のコミュニティを研究しようと考えると、実は選ぶことのできる研究科は複数あります。その中でも、オープンソースコミュニティという、実際に多くの企業が参加するコミュニティを研究対象にしようと私は考えたので、商学研究科への進学を決意しました。そこで大変なのは受け入れ可能な指導教員を見つける事です。私の場合は運が良いことに最初にコンタクトした商学研究科の佐藤和教授が快く受け入れを許諾して下さったので、副専攻選びに苦労することはあまりなかったと記憶しております。

商学研究科での副専攻生活は私にとって非常に刺激的でした。初めて触れる社会科学という分野はこれまでコンピュータサイエンスしか触れてこなかった私にとって未知の世界であり、この分野で研究をすすめて修論を書き上げることができるのか不安であると共に、未知の世界にチャレンジできることに興奮を覚えていました。幸いにも佐藤和教授の熱心な指導のおかげで、基本的な計量経営学の考え方と社会科学でよく利用される統計的手法の習得ができ、副専攻研究をすすめる上での下地を作ることができました。しかしながら、いざ私自身の研究をすすめるとなると、そこには様々な障壁が立ちはだかっていました。一番大きな障壁はやはりアンケート調査であったと感じます。これまで機械しか相手にしてこなかった私が、人間を相手にアンケート調査をし、それを統計的に分析する。正直これは大変でした。研究テーマを設定後、仮説を導出し、その仮説を検証するためのアンケートを作成する。その後、実際に対面やインターネットでアンケートを依頼する。統計的には最低でも100のサンプルが集まらないと修論は書けないと言われていましたから、なんとしてでも100サンプルを得ようと当時は東奔西走していました。結果無事に150近いサンプルが集まり無事に副専攻を終えることができたのです。この副専攻から「違う学問分野からは全く違った視点で対象にアプローチされる」ということを私は肌で感じることができました。これは非常に有意義であったと私は感じます。熱心に指導してくださった佐藤和教授には非常に感謝しております。
副専攻を終えるとあとは博士論文のために主専攻の研究をすすめることが主な任務となりますが、その一環として忘れてはならないのが半年間の海外留学です。私は指導教員の金子晋丈専任講師からハワイ大学におります Jason Leigh 教授を紹介していただきました。Jason Leigh 教授はハワイ大学において可視化の研究をされており、私が主専攻で研究している高速分散ストレージ技術と共同研究を立ち上げるという形で私はハワイ大学へ赴きました。ハワイ大学はとても素晴らしい環境でした。バスでちょっと行けば海や山がありますし、気候もとても過ごしやすいです。このような環境で半年間研究を続け、結果としてハワイ大学で設計・開発されているタイルディスプレイを用いた遠隔共同システムSAGE2に対して、私が研究・開発している高速分散ストレージシステムContent Espressoをうまく統合することで、これまでよりもより高速にコンテンツファイルのやりとりを遠隔地とすることが可能となりました。この研究成果は2016年11月にありました、国際会議AINTEC2016において発表致しました。Jason Leigh教授の手厚い研究サポートとハワイ文化の紹介は私の留学生活を有意義なものにしてくれました。

半年間の留学を終えこれからは博士論文へ向けて研究をすすめると共に、GPEの内容を政策提言に昇華させる必要があります。すべての物事に共通して言えることだとは思いますが、はやり最後のまとめの段階が一番辛いです。博士を取得するための論文投稿も必要ですし、これまでの研究を総括する博士論文を書く必要があります。GPEの内容はステークホールダーをしっかりと定義し、さらにコスト構造などを明確にし、政策提言書を作成する必要があります。この時期、何が一番辛いかというと、改めてこの5年間で自分がしてきたことを冷静に振り返る必要があるということです。5年間を振り返って、私はリーディングの目指すべき人材になったのだろうか、リーディングを選択したことは正しかったのだろうか、そもそも博士を取らずに修士を終えて就職した方が良かったのではないか、リーディングへ行かずに通常の博士課程へ進んだ方がもっと深く研究できたのではないだろうか。あげ始めるときりがありません。考え始めると寝られなくなることもあります。答えは誰にも分かりません。私にも分かりません。だから、私は自分のこの5年間を信じることにしました。この5年間での主専攻・副専攻・GPEおよびその他リーディングのカリキュラムに主体的に取り組んできたことは必ず自身の糧となっているはずです。何年後になるかは分かりませんが、いつか、そう思えるようになることを信じて、これからリーディングを離れ、会社に就職した後も一生懸命に自分の人生を歩んで行こうと強く思っています。

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