「外国人」として「当該地域」を見つめるということ

髙橋 萌 社会学研究科 博士課程2年,RA2015
留学先:中央研究院民族学研究所
期間:2018年10月―2019年3月

1.主専攻の研究分野

私は国際移民研究と文化人類学を専門とし、台湾でフィールドワークを行っています。台湾は女性の社会進出の向上と少子高齢化などに由来する家族の機能維持の問題に対応するため、東南アジア諸国から多数の移民労働者を受け入れ、社会福祉サービスの質の向上を目指しています。中でも顕著なのはインドネシアから10数万人の家事介護労働者を受け入れている点です。親を家で看取る家庭が多い台湾では在宅介護が主流で、各家庭に住み込みで働く介護労働者の女性も少なくありません。私の研究では、先行研究ではあまり扱われてこなかったインドネシア人移民労働者の宗教や信仰の在り方に着目しながら調査を続けています。宗教施設や民間団体が支える様々なイベントや支援プログラム、労働者団体が提供する法律相談があるなど、移民労働者を取り巻く環境の整備を進めていこうとする動きが見られます。このような取り組みを考察することは、将来の日本を考える際にも有意義な示唆を与えてくれると確信しています。

2.留学先を選んだ理由

中央研究院は24の研究所と7つの研究センターを持つ総統府直轄の最高学術機関です。首都・台北市郊外に位置し、国内外との共同研究を進めています。本研究所は文化人類学および民俗学的な諸問題を取り扱う歴史と伝統のある研究所であり、将来的に必ず留学したいと思っていました。修士課程以上であれば、短期でも受入の申請が可能で、海外からの研究生でも所内の施設や図書館を無料で利用でき、研究支援体制も比較的充実している点が魅力でした。

3.留学により実りのあったこと及び困難な経験

研究遂行上、中国語の習得が必須であり、現地独特の発音の習得に苦労しました。英語が活きるのは研究所内での一部のやりとりのみで、現地社会固有の言語を基礎から徹底的に理解する重要性を日々感じながら研究しています。「外国人」が「外国」を研究する眼差しは現地の人々に容易に受け入れられるものではありません。論文を読むだけではわからなかったことを実際に見て感じて理解し、現地の文脈に即した課題設定へと変化させながら周囲に「彼らにとっての母語」で説明し理解を求める忍耐力が求められます。

村落における信仰に関する調査のために訪問した廟の記念館前にて
12月に実施した研究所内における研究発表の様子
アジア最大のLGBTの祭典「台北PRIDE」に参与観察を行った際の様子
地方選挙前で選挙活動も兼ねた意義深いデモ行進では
インスタグラムのハッシュタグを使って知名度を上げようとする立候補者が相次いで参列していた
地方選挙と合わせて同性婚の法的地位に関する国民投票が実施されるのに伴い、
民間団体が作成した学校における性教育のあり方を問う模擬投票パネル
台湾最大の伝統的な祭祀「東港迎王」に参与観察を行った際の街中の様子
漁師の寄付によって年々規模を増す廟口もライトアップされる
伝統的な祭祀で担がれたお神輿
上空には祭祀全体の様子を全国放送するためのドローンがいくつも飛び交い、
LED電球を使用した派手な装飾が目につく
科学技術の普及が地域の伝統的な祭祀の変容に与えた影響を感じずにはいられない
研究所の外観
研究所内には博物館が併設されている