國久義雄氏「私のキャリアパス―異文化の中での企業経営から学ぶこと 」

2018年12月8日(土)、本プログラムの活動拠点である日吉西別館にて、國久義雄氏よりご講演を賜りました。

國久氏は1956年に慶應義塾大学文学部、1958年には同大学経済学部をご卒業されました。ご卒業後はオリンパス株式会社へ入社され、日本での勤務を経てドイツへとご異動され、その後アメリカやロシアなどにおいてグローバルに活躍されました。オリンパス株式会社は、ドイツ製の多い顕微鏡産業を憂いて国産製顕微鏡を製作するという創業者の強い意志を基礎とした企業であり、数々の国産顕微鏡を生み出し、近年では内視鏡産業において名を轟かせる企業となっています。國久氏はオリンパス株式会社に勤められご活躍されただけでなく、拓殖大学において商学博士を取得されました。静岡産業大学、敬愛大学、国士舘大学で国際経営論、ヨーロッパ経済論、コーポレート・ガヴァナンス論などの講座を担当され、ビジネスだけではなく、学問の世界においてもご活躍されています。主なご著書には、『日・独多国籍企業発達論―日・独企業多国籍化過程の比較研究』(成文堂、1997年)、『国際企業経営の基本問題―国際経営論の入門』(成文堂、2003年)、『癒しのドヴォルザーク』(幻冬舎ルネッサンス、2006年)、『嘉矩・稲造・新平と台湾近代化―岩手三賢人の功績』(角川学芸出版、2009年)があります。現在は(米国)公認不正検査士、生涯学習インストラクターとして定年退職者、高齢者生活のリスク管理をテーマに研究・講演活動を展開され、ボランティア活動にも従事されています。本講演では「異文化の中での企業経営から学ぶこと」というタイトルで、異国においてご経験された異文化や、今の時代において博士人材に求められていることなどを、哲学者の格言や、論稿の一説を引用されながらご講演していただきました。

講演の前半部では、ご自身の携わってこられたオリンパス株式会社での事業、特に内視鏡のお話について伺いました。内視鏡の開発段階のお話や、内視鏡が石棺内部の調査や飛行機のエンジンの点検などにも幅広く活用されたこと。さらに将来的には医師の手を離れ、自律する内視鏡の開発が進められていることを伺いました。

また、國久氏が異国という異文化空間でお仕事をされる中で経験された、異文化体験についてもお話くださりました。日本ではあまり意識する機会がありませんが、諸外国、特にドイツへの入国の際や、ウォーターゲート事件におけるニクソン大統領側近の人種差別的発言問題に触れられ人種という属性を意識される機会があったこと。また、ドイツでは自らの信教に関わらず教会税を徴収されたこと、中近東ではお酒が飲めなかったことなど、日本では想像もできないほどに宗教の存在感が大きかったことなどをお話くださりました。他にも、訴訟社会と呼ばれるアメリカでは、何かトラブルがあるとすぐに訴訟問題に発展してしまうこと、ソビエト連邦の終末期とロシア連邦の黎明期にかけて現在のロシアに渡航された経験から、リアルな共産主義の実態を目の当たりにされたこともお話くださいました。

講演の後半では、ご自身も企業人として活躍されながら、同時に学問領域で活躍されたご経験から今後の日本社会において博士人材はいかに在るべきかについてご教授くださいました。國久氏は偶然、好奇心、執念という3つのキーワードを挙げられましたが、個人的には、好奇心と執念が心に響きました。好奇心を持つのは良いことであるが、下手の横好きや虻蜂取らずになるのではなく、知的関心を持つということなのであるとご説明くださり、執念とは國久氏曰く、「継続する意志」であるとのことでした。

私は、ここにビジネスと学問の2つの世界で成功された方の真髄を見たように思います。広くアンテナを張り巡らせながら、しかしその中で何かを継続して深め続ける意志を持つことが重要なのだと気付かされたように思います。我々は、将来グローバル化した超成熟社会において活躍することを期待され、リーディングプログラムに参加しています。そのためには、広く世界に関心を持ち、様々な問題と向き合うと共に自らの芯となるような何かを深めていくことが必要であり、それこそが主専攻ではないかと感じました。自らの研究に閉じこもるのでもなく、かといって広い世界に茫洋と漂うでもなく、強い意志と知的好奇心を磨く5年間にしたいと感じました。

(Texted by:RA7期生 法学研究科修士1年 小久保 智淳)