近藤 賢郎

主専攻 理工学研究科 D2
副専攻 医学研究科 修士
研究テーマ

Computer Science,Future Internet

趣味 スタバのコーヒー,TeX

RA自己紹介

私は,今や社会インフラとなったインターネットが抱える技術的な問題点を解決し,数十年先の社会においてもその持続可能性を担保することを志す Future Internet の研究に取り込んでいます.その中で,将来のインターネットを考える上で医療というアプリケーションの可能性の大きさを実感し,社会インフラたるインターネットはどこまでそのニーズをサポートできるかを検討するため,本プログラムを通して医学研究科への進学を志すようになりました.医療は高度な専門性を有する分野なので,そこで扱われるデータを正しく解釈しそのニーズを理解するためには,それ相応の教育課程を経る必要があります.その点,本プログラムは MMD 方式を採用しており計算機科学と医科学の二つの専攻を両立させることができるので,私にとってはとても魅力的なものに見えました.また,本プログラムには一流企業や行政機関の第一線で活躍されている方々がメンターとして数多く在籍されているので,本プログラムの活動を通して,特定の専門分野に過度に偏重することなく社会の実情に即した真っ当な感覚を養えるという点も魅力の一つです.

RAの生活

ある土曜日のスケジュール

ある2・3週間のスケジュール

8:00
起床.土曜なのに何故早起きせねばならないのか問い続けて早 1 年半.今となってはもう慣れた.
自宅から矢上に移動.
9:00-10:30
矢上にてテレコンに参加.某研究団体主催研究会のプログラム委員の臨時ミーティング.朝から忙しい.
10:30-12:30
午後からの日程に必要な資料の最終調整.一週間の進捗をスライドに纏め上げる.
矢上から西別館に移動.途中,昼食を購入し西別館で食す.
13:00-14:30
担当メンターとのゼミ活動.この日は某社の採用担当課長の方が視察に訪れていたので,普段より少し気合いを入れてプレゼンをする.
14:45-16:15
夏合宿でのコンペにむけた準備.コンペで行う新しい都市型救急医療システムの提案には,主に情報技術の視点からシステムの設計に汲みしている.
16:30-18:00
外部講師を招いてのキャリアパス講演会.自分自身のキャリアパスを思い描く上でも大変参考になる.
18:00-
親しい同僚何人かと夕食後,矢上に戻る.今週一週間でこなしきれなかった諸々の雑務をここで消化する.

GPE について

本プログラムのグループプロジェクト演習 (GPE) とは,所属 RA が担当メンターの方からの助言を頂きながら超成熟社会をキーワードとする一つの政策を作り上げる取り組みです.私の場合,医療サービスの高度化とその持続可能性を共存させうる value-based な医療制度の実現を目指して GPE の活動に取り組んでいます.超成熟社会を「高度な知的生産性を発揮することで生産年齢人口低下に起因する社会の衰退を乗り切ることが出来る社会」と定義するとき,社会に蓄積された高度な知的生産性を存分に発揮するためには高齢者の身心の健康 (active life) を下支えする高度な医療サービスが必要不可欠といえます.しかし,高コストな性格を有する高度な医療サービスは医療の持続可能性に対する疑義を呈するので,私は医療経済の分野で提唱されている Value-Based Health Care (VBHC) を基軸とした value-based な医療制度を実現することで両者の対立の解消を図ろうとしています.

VBHC を我が国の医療制度において実現するためには,技術面・制度面の両面に跨がる複雑な問題を解決する必要があります.VBHC では患者様の病態ごとに最大のアウトカムを導き出せる治療法 (best practice) を定量的評価により導き出し,当該病態に対する治療法を best practice により標準化することで医療コストの削減を図ります.しかし,この best practice を導出するために治療のアウトカムの一次情報である生の診療情報や生体情報の解析を行う過程で,技術面・制度面の両面に跨がる課題が浮上します.

技術面の課題としては,生の診療・生体情報の流通・分析を下支えする広域に跨がる分散型のセキュアな情報インフラが必要です.ここでの広域とは,精緻な定量解析結果を導き出すのに十分な量の一次情報が流通する規模と言うことで,全国規模のものを想定しています.また,患者様のセンシティブ情報を取り扱う特性に鑑み,自身のセンシティブ情報を誰が何の目的で利用できるかを患者様自らが指定・限定できる機能を持ち,さらに情報インフラに含まれ得る脆弱性への攻撃に起因する大規模なセンシティブ情報漏洩事故を防げる分散型のアーキテクチャをとる必要があります.

制度面の課題としては,患者様が自身の診療情報の信頼できる保管主体及び利用主体を積極的に選択できるとともに,診療情報に関する情報セキュリティを担保できる制度が必要です.治療を行った医療従事者が診療情報の保管やその利用目的の特定を行う現行制度では,治療のアウトカム評価への信頼性担保が困難となります.このため,患者様が診療情報の保管・利用主体の選択を行うことで,その役割を治療を行った医療従事者から分離する必要があります.また,治療を行う医療従事者と診療情報の保管主体の分離により医療サービスの可用性や医療情報の秘匿性を害するのは不適切なので,診療情報に関する情報セキュリティ(機密性,可用性,完全性)を担保する制度が必要となります.

私は,これら技術面・制度面の課題を解決するための具体的提案を GPE の中で行っています.技術面の課題に対しては,DiMIS と呼ばれる分散型の医療情報システムを提案しその実装を進めています.DiMIS は多数の自律的なストレージ運用者 (DiMIS storage operator) による広域分散ストレージシステムとして構成されます.また,制度面の課題に対しては,DiMIS 上での医療情報管理を対象とした法制度の検討を進めています.当該法制度では,DiMIS storage operator を免許制のもとにおき,それを根拠として患者の DiMIS 上の医療情報に関する権利の拡張や DiMIS storage operator が負担すべき義務の加重を行っています.

本プログラムの GPE は,文字通り文理融合の実践の場として大変エキサイティングでやり甲斐のあるものです.今後も value-based な医療制度の実現に向けた取組を,技術面・制度面の両面に渡って継続していきたく考えています.

これから本プログラムを目指す学生へ

このプログラムは,博士課程進学を志す頑なな意思があり,将来高度な専門性だけを持ち合わせた専門職人材となることに疑問を感じる方に適するものと私は考えます.修士課程のダブルディグリ制度や GPE の活動を通して,一つの専門性に縛られない広範な知見とそれらの実践能力を身につけることが可能だと思います.このプログラムに志願する前に,まずは将来どのような人材になりたいかを熟考してみて下さい.