デルフト工科大学との国際交流および現地施設見学等

2017年2月、日本での認知症プロジェクトの成果を、デルフト工科大学の大学院生や教員へ紹介し、意見交換を行いました。そして、オランダならではの認知症施策の現場を見学し、取り組みを学びました。

RA:小林優一岡本翔平平尾美佳角 晴美子今給黎薫弘
訪問先:
1) Zorgboerderij Het Boere Erf(ケア農場・ブーラ農園)
2) Delft University of Technology(デルフト工科大学)
3) Hogewey(ホグウェイ)
4) Alzheimer Café(アルツハイマーカフェ)
5) VUmc Amsterdam(アムステルダム自由大学医療センター)
活動時期:2017年2月

1) Zorgboerderij Het Boere Erf(ケア農場・ブーラ農園)
 ブーラ農園では、認知症ケアの一環として農作業やお菓子作りなどを行っています。入居者が室内に閉じこもらないよう、室外栽培や牧畜を行い、栽培から収穫、販売も行っています。入居者の症状によって仕事を割り当てるのではなく、その人にできる仕事があれば、誰でも入居可能な施設です。日本ではまだ、農業とケアを組み合わせている施設は少なく、このような取り組みを広げて行くことが今後大切になると実感しました。
(RA5期生 理工学研究科 修士課程2年 今給黎薫弘)

2) Delft University of Technology(デルフト工科大学)
認知症プロジェクトの国際連携先であるデルフト工科大学主催の研究発表会へ参加しました。私たちは、認知症に関する日本の現状(特に、オランダと日本の平均寿命の違いや、認知症施策に関わるエビデンス)を紹介しました。そして、これまでの私たちの取組みとして、「書道セラピーを通じた認知症患者のコミュニティー創出」、「認知症カフェのプロモーション」、「ケアプラン作成プロセスの簡潔化」、「フェアトレード商品として農作物(D-mark)を栽培する」アイデアを発表しました。お互いの課題について、参加大学の学生に疑問を投げかけ、意見交換を行いました。
(RA3期生 経済学研究科 博士課程1年 小林 優一)

3) Hogewey(ホグウェイ)
Hogeweyは、認知症の人のための居住空間です。アーバンスタイル、コスモポリタンスタイル、ムスリムスタイルなど、多様な住居スタイルがあり、全部で23の部屋が用意されています。入居者は、これまでの生活背景に近い人同士数名でグループになり、お風呂や茶の間を共同利用しています。
私たちが訪問した住居では、3名の女性入居者が茶の間に集まり、それぞれの時間を過ごされていました。入居者はそれぞれ個室を持ち、自宅のような印象がしました。施設の人に話を聞くと、認知症の人が昔の家に帰りたいと言うことはあまりないそうです。その理由は、入居者が「ここが私の住まいである」と安心できているからとおっしゃっていました。重度の認知症と診断された人が、このように穏やかに、しかも残存能力を活かしながら生活している様子は、にわかには信じられませんでした。
このような保護された広い場所のない一般的な施設であれば、認知症の人が住居空間の外に出たいと言えば、それは徘徊リスクが高いとみなされてしまうかもしれません。しかし、Hogeweyには住居空間の他に、池や噴水やベンチがあり、スーパーやレストラン、映画館、芸術活動の部屋などもあります。
私は入居者の人にとって快適な環境を提供することは、必要なケアの量を減少させるかもしれないことに気づきました。日本における快適な環境は何か、これからの課題として考えていきたいです。
(RA3期生 健康マネジメント研究科 博士課程1年 平尾美佳)

4) Alzheimer Café(アルツハイマーカフェ)
私は日本で認知症の方々のQuality of Life を向上させるために認知症カフェを広めることに関心をもっています。認知症カフェを広めるには、どうすれば良いのかを探るため、先進的なケアが行われているオランダのアルツハイマーカフェを見学しました。
オランダのアルツハイマーカフェは、20年上以上前に設立され、誰でも認知症のことについて知りたい人、語りたい人が無料で参加できます。開催と同時にとても人気が出て、オランダ全土に広がり、今では250か所以上あります。メディアを通じて、認知症や認知症カフェを広く宣伝することで、オランダの人は認知症に対する”タブー”を乗り越えていきました。驚いたことは、Alzheimer Nederlandのウェブサイトに若い人々が興味を持ち、共感するようになったことです。
日本の認知症カフェと違う点は、オランダではアルツハイマーカフェがあくまでも情報を提供する場、話すことによって交流を深める場であって、働いたり工作をしたりするというアクティビティを提供する場ではないことです。日本の認知症カフェの良さを活かして、誰もが訪問したくなる認知症カフェのモデルを考えてきたいと思います。
(RA5期生 経済学研究科 修士課程1年 角 晴美子)

5) VUmc Amsterdam(アムステルダム自由大学医療センター)
自由大学医療センターでは、本センターで開発された認知症診断ツール”Observation List for Dementia: OLD”について学びました。”OLD”は、認知症の初期診断を行うための指標です。”OLD”を用い、従来、医師の診察だけで判断していた認知症の診断精度の向上を目指しています。実際、担当医が問題ないと判断した患者のうち、”OLD”によって約20%の患者に初期症状があると判定され、実際に認知症の診断が認められた事例もあるそうです。
このようなツールを導入することにより、精度の高い診断を行うことができます。本フィールドワークを通じて、社会の中でどのように認知症の問題に対処していくべきなのか、一端を垣間見ることができました。
(RA5期生 理工学研究科 修士課程1年 今給黎薫弘)

  • ブーラ農園

  • デルフト工科大学図書館にて

  • グーセンス先生による開会挨拶

  • 認知症プロジェクト成果発表会

  • 交流の様子

  • アルツハイマーカフェにて

  • アムステルダム自由大学医療センター