東京インターナショナルスクール理事長 坪谷ニュウエル郁子氏 「教育は世界を変える」

2017年9月30日(土)、本プログラムの活動拠点である日吉西別館において、東京インターナショナルスクール理事長をはじめ、さまざまな教育機関や団体で役職を務められている坪谷ニュウエル郁子氏にご講演いただきました。

坪谷氏は学生時代から事業運営に創意工夫と行動力を発揮されるとともに、生きることについて深く考える中で教育の道に進んでいったそうです。その後英語学校であるイングリッシュスタジオの設立を出発点として、東京インターナショナルスクールをはじめとする教育機関や団体を立ち上げられ、現在まで幅広く教育活動に取り組まれています。活動を通じて立ち上げられた教育機関のひとつであるインターナショナルセカンダリースクールでは、発達障害を含め多様な生徒の個性に合わせた教育も行っていらっしゃいます。
インターナショナルスクールに通う生徒は、保護者の転勤等により複数の国々の学校で学校生活を送ることも少なくありません。そこで、どの国に行っても通用するカリキュラムとして坪谷氏が注目されたのが国際バカロレアです。
国際バカロレア (IB) は、まさに世界共通の成績証明書を実現することを当初の目的として開発された教育システムで、生徒を主体とした独自の全人教育が特色です。例えば、6つの領域を学ぶ小学校のプログラムでは、個別の事例としての「トピック」についての学習に留まらず、普遍性のある「概念」のレベルまで洞察することが求められるそうです。特にこの概念学習の考え方に関心を持つRAは多く、ご講演の最後には様々な質疑応答も交わされました。
坪谷氏は国際バカロレアの普及に長年尽力され、これまでに国際バカロレア機構の日本大使 も務められています。
坪谷氏の取り組みのひとつに、これまで欧米の数カ国語のみで受験可能だった国際バカロレアの卒業試験の日本語による受験の実現があります。実際に現在たくさんの科目が日本語で受験可能になっていますが、取り組みの理念として、言葉が文化と歴史を背負っていることや、経済事情や居住地域による格差をなくしていくことを挙げられていました。また、経済面についても支援の取り組みを進められており、徹底した課題解決中心主義を感じました。
さらに、教育再生実行会議の委員としての経験を交えつつ、日本の教育の問題についてもお話しいただきました。その中でも、全ての子供たちの能力を伸ばす、という実行会議の教育提言の理念を実現するために、発達障害等のある子供のための通級指導の予算獲得を実現して実態の改善に繋げられた経緯からは、坪谷氏の情熱と努力が伝わってきました。
日本の教育は人口規模に対して比較的高い学力水準にある一方、その背後には諸外国に比べても重い保護者の私費負担や先生方の負担があります。その中で、子供の貧困、発達障害を持つ生徒への個別支援の不足、日本語を母語としない生徒に対する補助の不足、学級内での学力差の問題といった現状も課題となっています。こうした課題について、教育に対して積極的な公的支出を行なっている諸外国の例も挙げつつ、坪谷氏は子育て・教育の充実こそがこれらの課題の解決に向けた「未来への先行投資」になると指摘されていました。また、これからの課題として、日本の大学の世界ランキングの低下が問題とされる中、その重要な評価指標のひとつである外国人学生の割合を改善するためには世界のインターナショナルスクールに対するアピールも重要になるだろうと述べられており、大学に属する者として世界規模で教育の将来を構想していく必要性に気づかされました。

ご講演の最後に、理念や目標の実現のためには、不器用であっても「できることを精一杯誠実に」やっていくことが大切であると述べられていたのは、きわめて現実的に多くのことを成し遂げられていらっしゃる坪谷氏の言葉だけに一層印象的でした。子供たちは私たちの未来であり、教育は未来を、世界を変えるチカラがある、という坪谷氏の思いを、それぞれの形で共有することができたように思います。

(Texted by: RA6期生 文学研究科修士1年 小関健太郎)

坪谷ニュウエル郁子氏
東京インターナショナルスクール理事長

東京インターナショナルスクール・アフタースクール
http://tokyois-as.com/