California Department of Public Health IAQ Program Chief 熊谷一清先生「海外で学ぶとは、海外で働くとは」

6月21日(水)、本プログラムの活動拠点である日吉西別館において、California Department of Public Health IAQ Program Chief、熊谷一清先生よりご講演をいただきました。

我々日本人学生への啓発ともいえる講演である。熊谷先生は、本学リーディングプログラムにおいて実施される海外インターンシップでも、受け入れ先として大変お世話になっている。講演は、熊谷先生の我々に対する発議とそれによるディスカッションで活発に進んだ。海外で学ぶ、海外で働くとはどのようなことなのか。

本講義の滑り出しは熊谷先生の突然の質問だった。
「はい、では質問をどうぞ?」
会場は沈黙である。それもそう、まだ熊谷先生はほとんどお話されていない。
どういうことか。

続いて、熊谷先生が口を開く。
「皆が主体性をもち積極的にこの場に参加していれば、皆は聞きたいことだけを私から盗んでいけばよいだろう。質問がないならば、なぜ今ここにいる?」

その始まりは印象的であった。熊谷様が終始講演で強調したのは「能動的(Independent)、積極的(Positive)であれ」というメッセージである。例えば、スタンフォード大学で学ぶ学生は、講師の質を見極める。もし、レベルが担保されていない講義があろうものなら、学生から弾劾が下るような環境であるという。そのくらい、学生が「真剣」に臨むのである。
しばらくして、ちらほら質問が出始め、我々も「真剣」にその講義を聞き入った。

日本人はおとなしめで消極的なイメージであり、実際にその表現は的を射ていると思う。しかし、海外、特にアメリカでは「Who are you?」なのである。すなわち、文化的、民族的背景の全く異なる人々が一同に会し、勉強や議論、ビジネスを行うのが現代の国際社会、明確な意志表示をしなければその場にいなかったものと同じとみられる環境なのである。これはアドミッションの段階でもその特徴が表れている。すなわち、海外における履歴書、Resumeは定型的なフォーマットが存在しない。デザインが得意な人間であれば、そのデザイン力を生かしてもよいのである。本人の全てをあらゆる表現で示せるのがResumeであり、定型的な日本の履歴書しか知らないと海外で面喰うだろう。

熊谷様は、自身の海外の議論でのエピソードなどを以て、我々に積極的な議論参加の重要性を示してくれた。しかし、だからといって他に率先して喋りまくればよいというわけではなく、しかるべき時には明確な意志表示を、傾聴すべき場面ではしっかりと耳をすますことが重要なのである。
だが、総じて日本人は明確な意思表示が苦手である。これは集団主義に代表される日本人の文化的な一側面ではあるが、国際的なビジネスの文脈では暗示的な日本人特有のコミュニケーションは相応しくないだろう。
また、熊谷先生によれば、我々日本人が、英語での議論でうまく自分の意見を伝えることができないのを、英語の不堪能さのせいにする傾向があるという。しかし、実はそうではなく、そもそも伝えたいことがまとまっていないことが問題になっている場合が多いという。明確な意思表示をしない癖が習慣となってそもそも伝えたいこともまとめられないのは、そもそもの問題である。

また、日本人がよく陥りがちな組織の肩書への拘りについても、言及下さった。世界における大学ラインキングは様々な指標が存在し、その評価軸によって左右されるが、最も有名なWorld University Rankingで、慶應義塾大学は日本では11位、世界で600-800位である。熊谷先生は講演の中で直接サイトにアクセスし、その順位をスライドに示してくださった。このような順位では、「慶應義塾大学」の名は世界においてはほとんど知られていないだろう。日本の大学の最高峰に君臨する東京大学でさえも40位でこれでも世界的には有名とは言えないレベルである。つまり、世界においては、慶應義塾大学の肩書はほとんど意味をなさないのである。その中で、大学にいるメリットについて、熊谷様は「資源」「表現力-知識、語学、論理展開力」「仲間(ネットワーク)」を挙げられた。特に仲間の存在は最も大きなものになっているとの経験談をお話下さった。近年の専門領域の多様化と複雑化が進む社会においては、協力や提携こそが必要である。そのためにも、自分および自分のやりたいことを手短に、論理的に伝えられる能力が必須であろう。

様々な質疑応答と議論を経て、熊谷先生は最後に我々への激励を下さった。
やりたいことがない人へは、「与えられた場で精一杯やってみる」ことが大切であるという。物事の面白さはある程度やりこまないと意味がない。
そして、何より失敗することが大切である。
失敗しないのは進歩していないのと同等である。
-「No pain, No gain」
来年へのインターンおよび今後の研究活動に向けて、海外への意識が高まった貴重な講演であった。

(Texted by : RA6期 商学研究科修士課程1年 石田陽一朗)

熊谷一清氏
California Department of Public Health IAQ Program Chief,
Lawrence Berkeley National Laboratory Affiliate Scientist
東京理科大学 客員教授